2016年6月13日に発効した「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための公益財団法人交流協会と亜東関係協会との間の取決め」(以下「日台民間租税取決め」または「日台租税協定」という)(全29条)が2017年1月1日より発効されます。これにより、これまで企業や個人が日本と台湾の双方の源泉地で課税されていたものが、同協定の適用により二重課税を回避できるようになりました。
ここでは、その主なポイントと適用時期に係る注意点を整理して説明いたします。
概要
*1日本側の条文によれば「台湾居住個人・台湾法人の各課税年度(暦年・事業年度)において開始又は終了する12か月において183日を超える特定の役務提供(プロジェクト)」は国内事業所(PE)に該当するとされています(外国居住者等所得相互免除法第2条六ハ・同政令第4条③)。*2利子の受益者が中央銀行等を含む別途定める金融機関の場合には免税適用となる。
恒久的施設の定義(Permanent Establishment・PE)
- 固定場所PE:管理機構、支店、事務所、工場、作業場所、鉱山・採石場等天然資源を採取する場所
- 建設PE:建設、据付け、組立て等の作業、またはその指揮監督の役務の提供を6か月超行う場合のその場所
- サービスPE:企業が使用人または当該目的のために企業と契約関係のあるその他の人員を通じて、他方の地域においてコンサルティング・技術支援等の役務サービスを行う場合。但し、いずれの12ヶ月の期間においても合計183日を超えて行われ、かつ、同一のもしくは相互に関連を有する計画のために当該他方の地域において当該役務活動を行っている場合に限られる
- 代理人PE:一方の地域において他方の地域における事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、これを当該他方の地域において常習的に行使する者
日台租税協定の発効する前と後における日本親会社の税負担の比較
適用開始時期
配当、利子および使用料(ロイヤリティ)所得に係る優遇税率は台湾においては取引の発生時を基準とし、日本では支払時を基準に適用されることになります。
ポイントの整理
- 税負担の軽減面からみれば、配当、利子、使用料の源泉税率が20%から10%に下がります。多国籍企業グループが海外の関連会社から経営指導や技術指導等のバックオフィス業務を提供し、その対価を取得する場合にこれまでは一律に20%の源泉税率が課せられていましたが、今後は規定の要件を満たした場合で、かつ申請が許可されれば、当該営業利益を免税にすることができます。
- 個人所得の非課税枠が90日から183日に拡大します。これにより、個人の納税申告に係るコスト削減のほか、企業が派遣する海外出張者の滞在日数がよりフレキシブルに行えるようになります。
- 税務争議の対応面では、恒久的施設の定義の明確化により企業が海外で業務活動を行う上で留意すべき点を把握することができ、事後的に恒久的施設としてみなされるリスクを予め回避することができます。
- 取引に先立って企業が課税当局との間で、国外関連者との取引価格が独立企業間価格であるとの確認を得る制度として二国間の事前協議(事前確認制度)がある。当該協議の結果は双方に拘束力を有するため、あらかじめ移転価格の課税リスク等に係る争議を回避することができます。また、企業が税務当局との間で予想される移転価格に関する問題を前もって解決することで、コスト・事務負担が予想される税務調査のリスク回避にもつながります。
日台租税協定の詳細
http://www.mof.gov.tw/File/Attach/1017/File_6718.pdf (台湾側)http://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2016/28taikou_05.htm (日本側)