台湾人事労務
残業代の計算
残業代とは、労働基準法で定められた法定労働時間を超えて働いた際に支払われる割増賃金のことをいいます。残業代の計算の基本は、普段の給料に何倍割増して支払うかということです。具体的には、時給(月給や日給の場合、時給に換算した金額)を1と考え、割増率と呼ばれる数字を定めます。割増率は、勤務日や勤務時間数により異なる場合があるため注意が必要です。
1.通常勤務日の残業
通常勤務時の1時間当たりの賃金に加え、さらに当該時給の1/3 倍(または2/3)以上を加算して賃金を支給します。
- 最初の2時間:時給×(1+1/3=約1.34)
- 次の2時間以降:時給×(1+2/3=約1.67)
2.休息日の残業
休息日の時間外労働については、賃金割増率は通常勤務日と同じですが、残業時間を実際の勤務時間ではなく4時間を1単位として算定する点が異なります。4時間までは4時間として計算し、4時間以上8時間以下は8時間として計算します(労基法24条2項、36条)。
3.例暇日及び国定暇日の残業
国定暇日の時間外労働については、通常勤務時の2倍の賃金割増率となります。なお、例暇日に原則労働者を勤務させることは禁止されていますが、天災等特別な事情によりやむを得ない場合は代休を付与するとともに2倍の賃金割増率で残業代を支給します。
残業代の割増賃金率
労働時間 | 通常勤務日(平日*1) | 休息日(土曜日*1) | 国定暇日(祝日) | 例暇日(日曜日*) | |
法定内労働 | 0~2時間 | -*2 | 1.34倍 | 1倍 | 1倍+代休 |
3~8時間 | 1.67倍 | ||||
法定時間外労働 | 9~10時間 | 1.34倍 | 2.67倍 | 1.34倍 | 2倍 |
11~12時間 | 1.67倍 | 1.67倍 | 2倍 | ||
備考 | 残業時間を実際の勤務時間ではなく4時間を1単位として算定 | 実働時間8時間以内の場合、8時間分を付与 |
実働時間8時間以内の場合、8時間分を付与 代休と残業代の両方を付与する必要がある |
*1 会社により曜日が異なる場合もある。 *2 月額基本給に含まれる。
みなし残業(固定残業制)について
台湾にもいわゆる「みなし残業」(責任制)があります。労働基準法84条-1に定める下記の要件を満たす場合、労働時間の計算を実働時間ではなく「みなし時間」とし、裁量労働制を採用することが可能です(但し上限は2時間)。
(1)労基法84条-1の指定業種*の場合
- 指定業種に該当していること
- 従業員と事前協議の上、書面による同意を得ていること
- 従業員にとって不利益とならないこと
- 主務機関に届出済みであること
*広告業、会計事務所、コンサル、不動産、保険、内装業等
(2)上記(1)以外の業種の場合で下記のいずれにも該当する場合
- 月給が15万元以上であること
- 労基法施行細則第50条の1第1号指定の監督管理者(主管レベル)であること
- 主務機関の許可申請済みであること
三、総経理の残業代について
「経理人」として登記され会社と委任契約している総経理については、そもそも労働基準法が適用されない可能性があります。詳細については法律の専門家にご相談ください。