台湾人事労務

福利委員会

福利委員会の設置義務

台湾では、50名以上の従業員(社会保険加入者)を有する事業所に対して従業員の福利厚生を運用する「従業員福利委員会」の設置を義務付けています。

福利金は、資本金や営業収入、従業員給与から一定割合を原資として専用口座に積み立てます。
保管・運用は労使双方が共同で福利委員会名義の専用口座で行います。

  • 福利委員会創設時の会社の資本金の1% ~ 5%を積み立て
  • 毎月の営業収入の0.05% ~ 0.15%を積み立て
  • 従業員の月給の0.5%を源泉徴収して積み立て
  • スクラップ売却額の20%を積み立て(ある場合)
申請手続き

福利委員会の設置には所定の申請書と下記書類の添付が必要です。設置後は四半期(3ヵ月)ごとに委員会を開催して議事録を保管します。

項目 内容
1. 申請準備 労働局の公式サイトの申請システムにて申請準備を開始
https://wfs.mol.gov.tw/WFWeb/Web/apply_login.aspx
2. 仮申請(オンライン) 申請書の記入
「職工福利機構籌備申請書」(登錄職福線上申請系統→設立申請書→輔導申請登記)
3. 委員候補者の選出 福利委員会準備委員若干名、招集者1名にて準備会議を開催
1. 定款、年度経費予算及び業務計画等のドラフト
2. 委員の選出
4. 福利委員会の開催 1. 会議の7日前までに第一回福利委員会の招集 
2. 会議にて主任委員を選出
3. 主任委員が議長となり定款、年度経費予算及び業務計画の決議承認を行う
5. 設立申請(オンライン) 1. オンライン上で以下の資料を記入 
(1)職工福利機構申請書
(2)定款
(3)委員名簿
(4)年度予算
(5)年度業務計画書
(6)福利金の拠出一覧表
(7)議事録
2. 会社の登記簿コピーをアップロード
3. 労働局にて上記資料を確認後、許可公文書と専用口座開設証明が会社に送付される
6. 国税局での統一番号申請 国税局にて福利委員会の税籍登録を行い統一番号を取得する
7. 銀行での専用口座開設 下記の書類をもとに市中の銀行で福利委員会の専用口座を開設する
1. 労働局発行の許可公文書 
2. 専用口座開設証明
3. 専用口座の印鑑
4. 主任委員の印鑑
8. 労働局への届出 下記の書類をもとに労働局に届出をする
1. 印鑑の印影 
2. 専用口座開設証明(原本)
3. 銀行の入金証明書(資本金1~5%×の拠出額)
9. 受理証明の発行 上記手続きがすべて完了後、「職工福利機構證」(福利委員会証明書)が発行される

 

福利金の用途

福利金は社員旅行や社内レクリエーションに活用することができますが項目ごとに予め支出割合が定められています。したがって、福利金全額を三節賞与(端午節、中秋節、春節)に使うのではなく、社内イベントや団体保険料の支払い等にバランスよく配分する必要があります。

   a. 福利補助関連の支出(冠婚葬祭等の手当て)は30%以内まで
   b. 教育奨励関連の支出(従業員のリスキング費用、子女の学費援助)は40%以内まで
   c. レクレーション関連の支出(文化活動、レジャー、スポーツ等)は50%以内まで
   d. その他の支出(三節賞与、団体保険、住宅ローン利子補助、財形、保育や介護支補助、退職した従業員への慰労等)は40%以内まで
 
福利金の管理と課税
専用口座に拠出した福利金は会社の帳簿とは別に管理し法人税を申告する必要があります。
福利金は拠出時に全額を損金処理することができますが、実際の支出額が拠出額の60%未満となった場合はその不足分につき法人税が課されます。
例えばFY24の拠出額が100万元で、三節賞与が30万元、従業員の子女教育補助が20万元の場合、当該年度に実際に支出した額は拠出額60%(60万元)との差額10万元に対して20%の法人税が課されます。
 
福利委員会の年間スケジュール(例)

  • 2024年1月:福利委員会設置、拠出開始
  • 以降毎月:従業員の口座から源泉徴収し拠出、毎月の売上から一定額を拠出、記帳
  • 以降四半期ごと:福利委員会の開催
  • 2023年12月:福利委員会帳簿決算
  • 2024年1月:福利委員会の源泉税申告
  • 2024年5月:福利委員会の法人税申告
実務上の取り扱い
福利委員会の設置と福利金の拠出には管理・運用にもコストが生じます。台湾のローカル企業では支店を新たに開設することで事業所あたりの従業員数を少なくし福利委員会の設置要件を回避するところもあります。

罰則

福利金の未拠出あるいは拠出不足の場合、代表者の罰金3,000元が科されます。
また、福利委員会の設置義務があるにも関わらず設置を怠り所定の拠出を行わなかったことで従業員に不利益が生じた場合、従業員は事前通告なしに雇用契約を一方的に終了でき、解雇手当を請求することができます(労基法第14条1項-6、労工退職金条例第12条1項)。

 

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