台湾人事労務
解雇金
台湾では、違法行為などによる即時解雇が認められるほか、基本的には労働基準法で定められている特定状況下における方法でしか使用者からの一方的解雇が認められていません。
使用者は、合理化による職種の消滅といった経営上の必要性が認められる場合には、労働者を予告解雇することができます。その際、労働者に勤務期間1年ごとに1か月分(旧制度)または2分の1か月分(新制度)の平均賃金相当の解雇手当を支給しなければなりません(労基法11条、13条但書、16条)。
解雇予告期間
解雇予告期間は、従業員の勤続年数に応じて定められています。所定の期間内に告知できなかった場合、不足分の日数に平均賃金を乗じた額を解雇手当に追加して支払う必要があります。
- 勤続期間が3ヵ月以上1年未満のものは、10日前までの予告が必要
- 勤続期間が1年以上3年未満のものは、20日前までの予告が必要
- 勤続期間が3年以上のものは、30日前までの予告が必要
- 勤続期間が3ヵ月未満のものは、労使の協議にて予告日を決める
解雇金の支払い
解雇が決まると、使用者は解雇した日から30日以内に従業員に解雇金を支払わなくてはなりません。
(新制度適用事業所は)解雇金は勤続年数1年につき平均月給の0.5ヵ月分とし、最高額は6カ月分を上限とします。勤続期間が1年未満の者は日数で比例計算します。
平均月給
解雇日前の直近6カ月間に支給された給与総額を当該期間で除した額または、勤務期間が6カ月未満のものは勤務期間中に支給された給与総額を当該期間で除して平均月給を計算します(労基法第2条第4項)。
事例
平均月給が NTD 30,000、勤務期間が3年6ヵ月15日の従業員の場合
NTD 30,000×1/2×{3+〔(6+15/30)÷ 12 〕}=NTD30,000× (1+37/48) = NTD 53,125 (上限の6カ月分=NTD 180,000以内)
会計処理は、解雇金の支給が確定した時点で費用に計上しますが、予め見積り計上することも可能です。
労働局への届出
雇用者は従業員が離職する10日前までに所轄の労働局に届出が必要です。
なお、一度に大量の従業員を解雇する場合には解雇の事実が発生する60日前までに所轄の労働局への届出が必要となります。但し、天災事変その他やむを得ない事由がある場合は日数制限は緩和されます。
通知を怠った場合、3万元以上15万元以下の罰則が科されます。
解雇予告が不要な場合
(1)懲戒解雇
労基法12条で定める以下の懲戒解雇に該当する場合は解雇金を支払うことなく即時解雇が可能です。
- 雇用契約締結時に虚偽申告を行い、雇用主に損害を与えたもの
- 雇用主およびその家族、ならびにその代理人または同じ職場の他の従業員に対して暴力的・侮辱的行為をしたもの
- 有期懲役を受けたもの
- 雇用契約または就業規則に対し重大な違反を行ったもの
- 機器、工具、原材料、製品その他雇用主の所有物に対し故意に損害を与えたもの、または雇用主の技術・営業秘密を故意に漏洩し雇用主に損害を与えたもの
- 正当な理由なく連続して3日以上無断欠勤をしたもの、または1カ月間に6日以上の無断欠勤をしたもの
(2)辞職・自己都合退職
従業員本人のキャリアアップや現状への不満を理由とした辞職(自己都合による退職)は、解雇金の支払いは不要です。
(3)就業規則の解雇理由に基づく場合
就業規則で賞罰規定や解雇理由を規定している場合、以下の手順を経て懲戒処分することができます。
但し、労基法22条第2項の規定により労使双方で別途取決めがない場合、雇用契約の賃金内容を変更することはできません。
- 口頭にて警告し、業績改善計画を策定する
- 書面にて警告し、業績改善計画が達成度合いを判定する
- 最終警告を行い、従業員に対して改善の最終期限を通知する