台湾人事労務
従業員の解雇・辞職
労働契約が終了する場合には、大きく分けて、労働者の意思で終了させる場合(1.普通解雇、2.懲戒解雇)、使用者の意思で終了させる場合(3.辞職・自己都合退職)、労働契約期間満了等により終了する場合(合意退職)等があります。
1.解雇予告が必要な場合
(1)普通解雇・会社都合による離職
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とすると定めています。また、労働基準法では、使用者は労働者に勤務期間に基づく所定の日数前までに解雇を予告しなければなりません。予告を行わず解雇した場合、会社側は不足日数分の平均賃金を労働者に支払うことになります(労基法11条、13条但書、16条)。
従業員への解雇予告
- 勤務期間が3ヵ月以上1年未満のものは、10日前までの予告が必要
- 勤務期間が1年以上3年未満のものは、20日前までの予告が必要
- 勤務期間が3年以上のものは、30日前までの予告が必要
- 勤務期間が3ヵ月未満のものは、労使の協議にて予告日を決める
労働局への届出
雇用主は従業員が離職する10日前までに所轄の労働局に届出が必要です。 なお、一度に大量の従業員を解雇する場合には解雇の事実が発生する60日前までに所轄の労働局への届出が必要となります。但し、天災事変その他やむを得ない事由がある場合は日数制限は緩和されます。通知を怠った場合、3万元以上15万元以下の罰則が科されます。
解雇手当の算定
勤務期間に応じて支給額が変動します。勤務年数1年につき平均月給の2分の1を支給するものとし、最大で6カ月分を上限額とします。なお、勤務期間が1年未満の場合は、期間に応じて比例計算します。
平均月給
事実の発生日の直近6カ月間に支給された給与総額を当該期間で除した額または、勤務期間が6カ月未満のものは勤務期間中に支給された給与総額を当該期間で除して算出します。事実の発生日から直近6カ月間の総日数が実際の勤務日数の60%を下回るものについては、60%を乗じた概算額となります(労基法第2条第4項)。
事例
平均月給が NTD 30,000、勤務期間が3年6ヵ月15日の従業員の場合
NTD 30,000×1/2×{3+〔(6+15/30)÷ 12 〕}=NTD30,000× (1+37/48) = NTD 53,125 (上限の6カ月分=NTD 180,000以内)
会計処理
原則、解雇手当の支給が確定した時点で費用計上しますが、保守的に見積り計上することも可能です。
解雇予告が不要な場合
1.懲戒解雇
労基法12条で定める以下の懲戒解雇に該当する場合は予告手当を支払わず労働者を即時に解雇することができます。
- 雇用契約締結時に虚偽申告を行い、雇用主に損害を与えたもの
- 雇用主およびその家族、ならびにその代理人または同じ職場の他の従業員に対して暴力的・侮辱的行為をしたもの
- 有期懲役を受けたもの
- 雇用契約または就業規則に対し重大な違反を行ったもの
- 機器、工具、原材料、製品その他雇用主の所有物に対し故意に損害を与えたもの、または雇用主の技術・営業秘密を故意に漏洩し雇用主に損害を与えたもの
- 正当な理由なく連続して3日以上無断欠勤をしたもの、または1カ月間に6日以上の無断欠勤をしたもの
2.辞職・自己都合退職
従業員本人のキャリアアップや現状への不満を理由とした辞職(自己都合による退職)は、解雇手当の支払いは不要です。
3.就業規則の解雇理由に基づく場合
就業規則で賞罰規定や解雇理由を規定している場合、以下の手順を経て懲戒処分を行うことができます。但し、労基法22条第2項の規定により労使双方で別途取決めがない場合は雇用契約にある賃金の内容を変更することはできません。
- 口頭にて警告し、業績改善計画を策定する
- 書面にて警告し、業績改善計画が達成度合いを判定する
- 最終警告を行い、従業員に対して改善の最終期限を通知する