台湾人事労務

変形労働時間制

変形労働時間制とは

労働基準法に規定された労働時間の運用を弾力的に行う制度のことです。簡単にいうと「特定の期間中に法定労働時間を越えた労働が可能になる制度」のことを指します。
労働基準法では労働時間を1日8時間、1週間40時間までと定めており、この時間を超えてしまうと労働基準法違反になりますが、実際には繁忙期などで1日8時間を超えて働かなくてはいけないケースもあります。

例えば、4週間単位の変形労働時間制を導入した場合、繁忙期は10時間働き、それ以外の週(閑散期)は6時間だけ働くということが可能となります。週の平均労働時間が40時間以内になれば、特定の日や週の労働時間が法定労働時間を超えても違法にはなりません。

メリット

一般的な固定労働時間制ですと、業務量が少ない期間も所定の時間を労働させなくてはならないため、繁忙期には超過労働時間分の残業代が発生します。一方、変形労働時間制を導入すれば、閑散期に減らした労働時間を繁忙期に充てることができるため、繁忙期に所定労働時間を超過しても、残業代が発生しにくくなります。

例えば、飲食店のように曜日や時間帯によって閑散期と繁忙期がある場合、変形労働時間制を導入されることをお勧めしています。
ただ、導入の際は変更・締結した就業規則や労使協定(または労使同意書)と所定の届出が必要です。

デメリット

なお、変形労働時間制はあらかじめ期間内の勤務時間を規定する必要があり、決定したシフトをあとから変更することはできません。あとからスケジュールの変更となることが多い企業は、法定労働時間内でシフト制を採用したほうがいいでしょう。
また、変形労働時間制を導入すると「所定の労働時間」と「残業時間」の区別がつきにくくなります。適切な管理や運用ができないと、従業員の不満や長時間労働につながりやすいため、注意が必要です

導入の適用要件
  • 変形労働時間制適用指定業種(指定適用勞動基準法彈性工時之行業)に該当していること
  • 雇用契約書と就業規則に変形労働時間制採用事業者である旨を明記していること
  • 労資会議(労使協定)の議事録を作成し具備していること(労使協議には少なくとも従業員の過半数の出席ならびに四分の三以上の同意が得られたことを示す必要があります(同意者全員の署名))
  • 所定の手続きをとらない場合、罰則が科されるほか労働部のホームページ上に労基法違反法人として社名が公開されます。
タイプ 労基法 内容 例暇日/休息日
2週間単位

30条-2

36条-2-1

2週間のうち2日分の勤務時間を他の日に振り分けることができる。但し、以下の要件を満たす必要がある。

  • 1日の通常勤務時間:10時間を超えない
  • 1週間の通常勤務時間:48時間を超えない
  • 2週間の通常勤務時間:80時間を超えない
1週間に1日以上の例假日及び2週間で4日以上の例假日と休息日を設定しなければならない。
4週間単位

30条-1

36条-2-3

4週間のうち任意の勤務時間を他の日に振り分けることができる。但し、以下の要件を満たす必要がある。

  • 1日の通常勤務時間:10時間を超えない
  • 4週間の通常勤務時間:160時間を超えない
2週間に2日以上の例假日及び4週間で8日以上の例假日と休息日を設定しなければならない。
8週間単位

30条-3

36条-2-2

8週間のうち任意の勤務時間を他の日に振り分けることができる。但し、以下の要件を満たす必要がある。

  • 1日の通常勤務時間:8時間を超えない
  • 1週間の通常勤務時間:48時間を超えない
  • 8週間の通常勤務時間:320時間を超えない
1週間に1日以上の例假日及び8週間で16日以上の例假日と休息日を設定しなければならない。
通常(変形なし) 36条 7日毎に2日間以上の休日を付与しなくてはならない。うち休息日と例暇日は各1日とする
 
具体例(4週単位の場合)

4週間単位の場合、2週間で2日以上の「例暇日」および4週間で合計8日以上の「例暇日」と「休息日」を設定すれば、1日に2時間まで振替えすることが可能です。但し、1日の勤務時間は10時間を超えてはならず、4週間の総勤務時間は160時間を超えてはいけません。

例えば下表の場合、第1週の水曜日と第2週の金曜日を休日にし、同二日間の勤務時間計16時間を1時間ずつ16日間に振り分けることも可能です。変形労働制を採用していない場合には9時間勤務の日は残業代1時間分が発生しますが、採用している場合には割増賃金は不要です。

シフト制との違い

シフト制は従業員が時間制で交代してくれるため、残業が生じにくい傾向にあります。また、変形労働時間制とは違い、労使協定や就業規則に関する届出の必要はないので比較的導入しやすいといえるでしょう。一方、シフト制の場合は従業員の希望に合わせて労働時間を割り振る必要があるため、時期や時間帯によっては人材の確保が難しいというデメリットもあります。

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