閉鎖性株式会社とは、株主が50名以下であり、かつ、定款において株式の譲渡制限が定められている株券非公開発行会社を指します(台湾の会社法第356条の1)。
台湾で新設する日系現地法人の多くは、単一法人株主(日本企業1社による出資)が大部分を占めていましたが、最近では台湾企業(または台湾人)との合弁企業やマイナー出資による持株等により株主が複数となるケースが増えており、あえて株式譲渡制限のある「閉鎖性株式会社」として登記する会社も出てきています。
さて、今回は閉鎖性株式会社の株主の株式承継を起因とした非閉鎖性株式会社(通常の株式会社)への変更登記を回避する対策について、ケーススタディで説明いたします。
例)A株式会社は閉鎖性株式会社(以下、「A社」とする)として、a, b, c, d, eの5名が各20万株を引き受ける形で100万株を発行(全株普通株)して設立。その後、資金需要により第三者割当増資で40名の新株主による出資を受け入れる。しかし、不幸なことに創業株主の一人であったeが増資後に他界したため、eの法定相続人9名らがeの株式を承継することとなった。
(結論)A社は閉鎖性株式会社から非閉鎖性株式会社(通常の株式会社)への変更手続きが必要となる
(解説)まず、閉鎖性株式会社の要件の一つである、株主50名以下の要件がeの相続人の承継により満たせなくなります(承継前株主45名➡承継後53名)ので、承継したタイミングで非閉鎖性株式会社への変更手続きが必要となるわけです。
(対策)定款で株主の死亡時の株式承継についてあらかじめ規定を設けておく。例えば、株主の死亡により株式の承継が発生した場合には、取締役員の過半数の出席と出席者の過半数の同意に基づき既存株主または指定する第三者に対し、当該事象発生時の直近年度末の1株当たりの純資産にて割り当てることができる等、の条項を盛り込むことで強制変更を回避することも可能です。