台湾会計税務
法人税
台湾の法人税率は20%です。過去に何度か税制が変わり、法人税率も2009年までは25%でしたが、その後2010年~2017年には17%、2018年以降は20%となっています。
また、配当を行わず未処分利益がある場合には、前期末残高の5%が未処分利益追加税(法人税)として追加課税されます。未処分利益は期首残高に当期純利益を加算し、累損(ある場合)を補填後の残高10%を法定利益準備金として積立てた後の残高となります。
配当時の受取配当金に係る課税については場合は、台湾法人株主は非課税扱いですが、個人株主は所得税が課されます。また、外国法人等非居住者株主には源泉税が課されます(原則21%、日台租税取決めにより10%軽減可*)。
未処分利益追加税の計算
損益計算書 | FY1 | FY2 | FY3 | |
税引前当期純利益 | A | 1,000,000 | 1,000,000 | 1,000,000 |
当期法人税(20%) | B | △200,000 | △200,000 | △200,000 |
未処分利益追加税(5%) | C=前期末I*5% | – | △36,000 | △70,380 |
税引後当期純利益 | D | 800,000 | 764,000 | 729,620 |
未処分利益の増減 | FY1 | FY2 | FY3 | |
期首残高 | E | – | 720,000 | 1,407,600 |
税引後当期純利益 | F=D | 800,000 | 764,000 | 729,620 |
法定利益準備金(10%) | G=(F-累損)*10% | △80,000 | △76,400 | △72,962 |
配当支払い | H | – | – | – |
期末残高 | I | 720,000 | 1,407,600 | 2,064,258 |
法人税の申告
法人税の申告方法には、会計上の利益に税務上の加算・減算項目を調整して算出する「実額申告」と、財政部の標準率に基づき税額を概算する「拡大書審」(営業収入3,000元以下)と「所得額標準」(営業収入3,000超)があります(以下、「簡易申告」と呼ぶ)。簡易申告上の課税所得が標準率を上回る場合には、税務調査が原則免除されます。
上記とは別に「同業者利益標準」というものが存在するが、これは税務当局が推定課税する際の標準率である(申告者は使用しない)。
簡易申告用標準率 | 税務当局用 | ||
拡大書審 (営業収入+営業外収入が3,000万元以下) |
所得額標準 (営業収入+営業外収入が3,000万元超) |
同業者利益標準 | |
課税所得 | (営業収入+営業外収入)×拡大書審査純利益率 | 営業収入×所得額標準純益率+営業外収入-営業外損失 | 毎年税務当局が策定する標準査定率。証票や帳簿が不備な際の推定課税の依拠として使用。標準率には、純利益率と売上総利益率があり、総合的に勘案して課税額を概算する。 |
メリット |
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デメリット |
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2018年度「拡大書審」「所得額標準」「同業利益標準」一覧表(出所:財政部)
損金算入の要件
台湾では、損金の根拠となる原始証憑の要件について、費用別に詳細を定めています。例えば、輸入仕入については、輸出元のインボイスのほか、通関証明書や輸入納税申告書等の添付が必要です。これは、海外取引については、売主と買主の双方で保存される「統一発票」を経由しないため、恣意的に費用を過大計上するインセンティブが働くとみなすからです。また、非貿易取引に関しては、支払者の源泉徴収票と契約書が根拠となりますし、外国法人の本社共通経費を台湾支店に配賦する際は本社の監査済財務諸表及び配賦計算書類(認証済)を別添する必要があります。
費用別エビデンスの要件
項目 | 必要なエビデンス | 備考 | ||
給与 |
給与受領書(現金の場合)、給与台帳、タイムカード、勤怠管理表、源泉所得税納付書控え |
給与台帳には給料、残業代、免税食事手当2400元を記入 |
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仕入 |
国内分:統一発票、領収書 輸入分:インボイス、通関証明書、納税証明書、送金依頼書、EMS等控え |
輸入仕入については通関したことを証明する左記証憑がないと損金に算入できない。 | ||
家賃 |
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会社名義で契約した場合、経費計上が可能。個人大家で家賃が2万元以下の場合、源泉徴収不要。 | ||
書籍・文房具等 |
統一発票または普通領収書 |
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旅費交通費 |
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左記実費とは別に一定限度額まで日当を損金算入できる
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福利厚生費 |
従業員福利委員会が設置している場合:福利金の拠出を証明する金融機関の残高証明書 上記以外:統一発票 |
従業員福利委員会を設置・運営している企業は毎月の拠出額を一定額まで損金に算入できる。 従業員福利委員会を設置していない企業は毎月の売上高の0.15%を上限に実費を損金に算入できる。 |
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輸送費 |
統一発票、領収書 |
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通信費 |
領収書、支払書 |
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修繕費 |
統一発票、領収書 |
資産価値を高める場合、資本的支出として資産計上する |
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広告費 |
統一発票、領収書 |
自社商品をサンプルとして無償提供する場合、受領者から贈送品簽收單(試供品受領書)が必要。帳簿摘要欄にも明記が必要。ノベルティ等1点あたり1,000元以下の少額の場合は贈品日報表(試供品受領表)でもよい |
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光熱費 |
領収書、支払書 |
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保険料 |
領収書、支払書 |
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交際費 |
統一発票、領収書 |
仕入・売上高等に応じ、限度額が別途規定 |
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租税公課 |
税金納付控え等 |
法人税を除く租税公課は原価に含めることが可能(印紙税、輸入税等) |
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寄付 |
統一発票、領収書 |
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食事手当 |
従業員の受領サイン |
従業員は1人あたり月額2,400元以内は免税 |
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コミッション |
統一発票、領収書、契約書、送金依頼書 |
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備品 |
統一発票、領収書 |
8万元超でかつ耐用年数が2年を超える場合、資産計上 |
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ロイヤリティ (使用料) |
国内分:統一発票、契約書 国外分:インボイス、契約書、源泉税納付書控え |
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専門家への支払等 |
源泉税納付書控え |
2,000元以下は源泉税不要 |
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支払利息 |
契約書、返済スケジュール表、利息の支払証明 |
親子ローンの場合、市中金利と大きく乖離した支払利息分は否認される |
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貸倒引当金 |
一般債権:売掛債権×1%まで損金に算入することが可能 貸倒懸念債権:過去3期の平均貸倒比率に応じた引当額を限度に算入可能 |
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貸倒損失 |
①貸倒の事実を証明するもの(破産宣告等)または②回収期限から2年経過した未回収債権がある場合には、内容証明郵便、督促状を送付のうえ、損失計上する |
内容証明郵便の未達が確認された年度(①)または到達が確認された年度(②)に費用計上する |
出所:所得税法、營利事業所得稅查核準則「公務員出張日当標準」
実際の状況により、追加的にエビデンスが別途必要となる場合もあります。なお、普通領収書は小規模事業者向けの統一発票発行免除の代替エビデンスです。費用計上には、免用統一発票章(スタンプ)の捺印と統一番号の記入が必要になります。