台湾人事労務
健康・労働保険と退職年金
台湾の社会保険には、全民健康保険(健康保険に相当)と労働保険(労災・雇用保険に相当)、退職年金制度があります。
社会保険料の報酬月額には、名目に関係なく賞与やみなし残業代(基本給の一部としている場合)を含む経常収入を全て含みます。賞与は年度賞与を12ヶ月で按分し1ヵ月の平均賞与を月給に含めて報酬月額とします。通常の残業代は、社会保険料の報酬月額から控除することが認められています。
全民健康保険(健康保険)
日本でいう国民健康保険・健康保険に相当するものです。居留証を有する外国籍者を含む全員が加入対象者です。被保険者が事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分した標準報酬月額等を設定し、保険料の額や保険給付の額を計算します。
加入者のステイタスにより本人負担割合と標準報酬月額は異なります。
(1) 事業主(代表者・董事)の場合
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- 負担割合は本人100% 健康保険料負担額表_事業者、雇用主(2021.1.1以降)
- 当該事業所の従業員数が5名未満の場合、最低標準報酬月額は34,800元(月額保険料は1,799元)
- 当該事業所の従業員数が5名以上の場合、最低標準報酬月額は45,800元(月額保険料は2,368元)
- 上記の従業員数には代表者(董事)を含めない
- 代表者(董事)の標準報酬月額はいずれの従業員よりも高く設定しなければならない
(2)従業員の場合
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- 負担割合は本人30%、事業所60%、政府10% 健康保険料負担額表_被雇用者(2021.1.1以降)
- 最低標準報酬月額は24,400元(月額保険料は本人負担372元、事業所負担1,176元、政府負担196元)
例えば、董事長1名と従業員6名の事業所において、従業員の最高標準報酬月額が57,800元の場合、董事長の標準報酬月額は57,800以上にしなければなりませんが、従業員の最高標準報酬月額が24,000元の場合には董事長の最低標準報酬月額を下回るため、同標準報酬月額を45,800元として保険料を算定します。
健康保険カード(イメージ)
労工保険(労災・雇用保険)
日本でいう労災保険・雇用保険に相当するものです。常時5名以上の従業員を雇用する事業所は、加入義務があります。外国籍者も加入の対象です。給付項目は、普通災害保険(出産育児、傷害疾病、障害、老年、死亡)と労働災害保険(傷害疾病、医療、障害、死亡)があり、従業員の就業開始日が加入日です。
原則、事業主(代表者・董事)は労工保険に加入できませんが(国民年金に加入)、労働に従事している事業主については任意で労工保険に加入することはできます。但し、最低1名以上の従業員を雇用していなければなりません。
加入者のステイタスにより本人負担割合と標準報酬月額は異なります。
(1)事業主(代表者・董事)の場合 労働保険料負担額表_総額(2021.1.1以降)
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- 負担割合は本人100%
- 最低標準報酬月額は45,800元(月額保険料は2,368元)
- 上記の所得に達しない場合は直近1年間の給与源泉徴収票または直近3ヵ月の給与台帳もしくは直近年度の法人税査定通知書等に基づく
- 代表者(董事)の標準報酬月額はいずれの従業員よりも高く設定しなければならない
(2)従業員の場合
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- 労働保険料の負担割合は、本人70%、事業所20%、政府10%
- 最低標準報酬月額は24,400元(月額保険料は本人負担372元、事業所負担1,176元、政府負担196元)
退職年金制度(確定拠出型)
台湾には、法定の退職年金制度があります。これは、事業主に毎月一定(6%を下回らない額)の拠出額を負担させる確定拠出型年金制度です。労働基準法が適用される従業員を適用対象者とし、外国籍者は含まれません。適用開始日は従業員の就業開始日です。
事業主(董事等)やその他労基法を適用しない従業員は、自費負担により加入することができます。