台湾人事労務

解雇制度と補償金(解雇予告金/解雇手当)

台湾では、従業員を解雇する際、法律に定められた正当な理由がある場合に限り、使用者による一方的な解雇が認められています。また、解雇に際しては、事前の通知および解雇手当(資遣費)の支給が義務づけられています。

解雇が認められる主なケース(労働基準法第11条・13条)
  • 経営合理化による職務の消滅
  • 事業の縮小または営業終了
  • 天災・不可抗力による事業継続不能 など

2.即時解雇が可能な場合(労基法第12条)

以下のような重大な規律違反等がある場合は、予告・手当なしでの即時解雇が可能です:

  • 雇用契約時の虚偽申告による損害
  • 雇用主や他従業員への暴力・侮辱行為
  • 無断欠勤(連続3日以上、または月6日以上)
  • 故意による損害・情報漏洩 など

3.解雇予告期間と解雇予告金(労基法第16条)

予告期間は、勤続年数に応じて以下の通り定められています:

勤続年数 予告期間
3か月未満 労使協議で決定
3か月以上1年未満 10日前まで
1年以上3年未満 20日前まで
3年以上 30日前まで

※予告が間に合わなかった場合、不足日数分の平均賃金を補償する必要があります(=解雇予告金)。


4.解雇手当(資遣費)の支給(労基法第17条)

解雇が決まった場合、使用者は解雇日から30日以内に、勤続1年につき平均月給の0.5ヶ月分(上限6ヶ月分)の解雇手当(資遣費)を支払う必要があります。

平均月給の算定方法
  • 勤務6か月以上:過去6か月間の総給与 ÷ 6
  • 勤務6か月未満:在職期間の総給与 ÷ 月数換算
事例

平均月給:NTD 30,000

勤続期間:3年6か月15日 → 約3.77年

資遣費:NTD 30,000 × 0.5 × 3.77 ≒ NTD 53,125(※上限6か月=NTD 180,000)


5.解雇予告金と解雇手当(資遣費)の違い
比較項目 解雇予告金(第16条) 解雇手当/資遣費(第17条)
支払理由 解雇通知が法定期間より遅れた場合 会社都合による退職の場合
支払基準 不足日数 × 平均日給 勤続年数 × 0.5ヶ月(新制度)
性質 再就職準備期間の賃金補償 勤務年数に対する生活補償
同時支給の可能性 あり(即日解雇など) 原則として支給義務あり

6.労働局への届出義務
状況 届出時期
通常の解雇 解雇の10日前までに届出が必要
大量解雇(一定人数以上) 解雇の60日前までに届出が必要

※違反時には、NTD 30,000~150,000の罰金が科される可能性があります。


7.解雇手当が不要なその他のケース
  • 従業員の自己都合退職(辞職):手当支給義務なし
  • 就業規則に基づく段階的な懲戒処分:適切な手順(口頭・書面警告、改善計画)を経た場合は解雇可能

実務上のポイント
  • 解雇に関する通知・手当支給・労働局への届出は、すべて期限厳守が必要です。
  • 解雇手当は「支給が確定した時点」で会計上の費用として計上可能です(見積計上も可)。
  • 手続きの不備や違法解雇は、労働局からの是正指導・訴訟リスクを伴います。
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