日台M&A
財務・税務DDの調査項目
財務・税務デューディリジェンス
台湾で企業買収を行う際の一般的な財務および税務デューデリジェンス(DD)の調査項目は以下の通りです。これらの項目を徹底的に調査することで、潜在的なリスクや問題を早期に発見し、適切な対策を講じることができます。
1.会社概要
- ビジネスモデル:仕入、販売のサイクル、取引先のとの関係状況、資金的な留意点
- 人員体制:人員の状況・契約形態・属性、人員数や社会保険の適用状況の確認、人員に係る係争の状況
- 財務管理の状況:経理、外部監査、システムの状況
- 関係会社取引:海外の親子会社取引やオーナー個人会社の取引と資金の流れ
2.財務諸表の分析
過去3〜5年間の財務諸表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)を確認し、収益性、流動性、財務健全性を評価します。
3.損益項目
売上の構成、主要顧客、経常的な収益の把握、一時的な収益の有無のほか、コスト構造、主要な費用項目、変動費と固定費の割合を確認し、コスト管理の効率性を評価します。
台湾の中小企業では統一発票基準で収益を認識しているところが多いため、物流と会計にずれが生じるケースが多く対象期間における収益を正確に把握する必要があります。
- 損益推移の概況・増減分析と詳細の確認
- 顧客別売上・利益状況:顧客別収益推移、一部顧客への売上集中によるリスク分析、単価や取引条件の確認
- 収益認識:統一発票基準で収益を認識している場合、物流と会計にずれが生じる
- 関係会社取引:親子間取引・債権債務の確認
- 製品群別の売上・利益率の分析
- 原価計算の状況、不良品、長期滞留在庫、仕損品の管理方法の確認
- 人件費の状況、離職率の把握、社会保険料の支払状況及び計算基準の適正性の確認(経常的所得への算入漏れ)
- 費用の詳細分析:引き当て不足や現金主義による費用の過少計上
4.資産・負債項目
固定資産、流動資産、無形資産の評価を行い、資産の実態価値を確認します。短期負債、長期負債、引当金、偶発負債を含む負債の詳細を確認し、債務リスクを評価します。
台湾では従業員の権利を保護するため、法律で所定の退職金や解雇金の拠出・支払いを義務付けています。引当額が不十分な場合は純資産は減額調整します。
- 未払費用:未計上となっている項目がないか状況を確認(退職金、解雇金、残業代、社会保険料等)
- 売上債権:信用調査の有無、長期滞留債権や回収・管理方法の確認
- 棚卸資産:実地棚卸の方法・頻度、評価・管理方法の確認(貸出在庫や預かり在庫を管理していないケースが多い)
- 有形固定資産:管理状況全般、稼働状況、償却方法、設備投資の状況、償却済設備の確認
- 権利関係:登録や有効期間、帳簿価額の妥当性の確認
- 仕入債務:2年超の債務の益金振替の可能性や取引先の信用状況の確認
5.キャッシュフローの評価
営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローを分析し、企業の現金収支状況を把握します。
6.運転資本の分析
売掛金、買掛金、在庫の管理状況を評価し、運転資本の効率性を確認します。
7.税務関係
- 税務調査・指摘状況の把握
- 非居住者源泉徴収の適正性(海外取引が少ないローカル企業の場合徴収漏れのケースが多い)
- 損金不算入費用の確認(特に進行期においては将来課税リスクの可能性がある)
- 二重帳簿の有無
- 標準利益率との乖離状況
- 移転価格(海外関係会社との価格設定に関して当局から指摘・追徴されるリスク)